「登販の資格を取ってしばらく経つけど、最近便秘薬についてよく聞かれるんだよなぁ。でも便秘薬って種類多くてどれを選べばいいかモヤッとしてて困ってるんだよな。自分も困るけどお客様にも迷惑かかるし、ちゃんと確認しておきたいな」
こんな疑問にこたえる記事です。
私は現役のドラッグストアの社員で、登録販売者の資格も取得しています。実を言うと苦手な薬の知識がいくつかあるのですが、その中の一つの便秘薬について今回勉強し直しました。
できるだけ分かりやすく解説していきますので、同じような悩みでお困りの方の助けになれば幸いです。
また便秘薬をお探しの方にも参考になる内容となっていますので、便秘でお悩みの方もよろしければご覧ください。
便秘薬の成分を再確認しよう
便秘薬の成分ってホント種類が多いですよね、、、。「刺激性」と「非刺激性」はもしかしたらご存じの方も多いかと思いますが、それぞれどんな成分があって、どういう特徴があるかってなかなか把握しきれないのではないでしょうか。
ここではおもな成分を刺激性と非刺激性に分けて解説・紹介していきます。
刺激性
- ビサコジル
- ピコスルファートナトリウム水和物
- センナ(センノシド)
ビサコジル
ビサコジルはおそらく便秘薬ではかなり(個人的には1番)メジャーな、大正製薬さんの「コーラック」などに配合されている成分です。
ビサコジルは大腸を直接刺激して、腸のぜん動運動を高める特徴があります。
メジャーな薬に配合されて、お客様も「聞いたことがある」ということで、手を伸ばしがちになりそうですが、注意点がいくつかあります。
- 胃でも作用してしまうので錠剤には腸まで届くよう工夫がされている。なので絶対に割ったりして飲まない。
- 食後や牛乳を飲んだあと、制酸剤(胃薬)を飲んだ後は胃酸が弱まっている状態では胃で溶ける恐れがある。胃を刺激して腹痛などを引き起こす可能性もあるので空腹時に服用する。
- 妊婦に対しては推奨されない。子宮収縮を引き起こして、流産・早産につながる可能性がある。
便の水分が少なく固まっている場合は排便が難しいかもしれません。その場合は水分を補って排便を促してくれる成分が入ったものを選びましょう。(後で紹介します)
ピコスルファートナトリウム水和物
ピコスルファートナトリウム水和物は佐藤製薬さんの「ピコラックス」などに配合されている成分です。
刺激性ではありますが、比較的痛みも無く、習慣性も少ない方になります。胃や小腸で作用しないので、錠剤に特殊な工夫はされません。
大腸の粘膜を刺激して排便を促し、大腸からの水分吸収を抑える働きもあります。(水分吸収が押さえられると便が硬くなりにくくなる)
ピコスルファートナトリウム水和物は腸から吸収されることはほとんどないので妊娠中・授乳中でもつかえる便秘薬の成分となっています。
※念の為心配な場合は必ずかかりつけ医や薬剤師、登録販売者に相談しましょう。
習慣性は少ないとされていますが、腸管粘膜に炎症を起こすことがあるとされているため、長期の服用は避けましょう。
痛みが少ないということで、初めて便秘薬を試すという人にいいかもしれませんね。
センナ(センノシド)
こちらも割とよく効く成分ではないでしょうか?(でかでかと「センナ」って書かれた商品見たことありません?)
生薬成分でセンナという植物の葉や実、それらからの抽出物を製剤化したものになります。センノシドとはセンナの特有成分の名前です。
センナも胃や腸では吸収されず大腸の腸内細菌によってセンノシドが分解されて、レインアンスロンという物質に変わります。
このレインアンスロンが大腸を刺激して排便を促してくれます。痛みは比較的ある方で、習慣性もあります。
長期服用では耐性がついて効果が感じられにくくなってしまうので避けましょう。また尿が着色して黄色や赤っぽい尿が出ることがあります。
腸内細菌の働きが必要となるので、細菌を殺してしまう抗生剤を併用すると効果が弱まる恐れがあります。
センナはお茶のようにして飲めるものもあるので、錠剤が苦手で飲みづらくて困ってるという人におすすめですね。
非刺激性
非刺激性は結構種類が多いですがせっかくなので調べ直した7個全て解説・紹介していきます。
非刺激性の特徴はその名の通り腹痛などの痛みが少ないものが多いです。しかしものによっては習慣性があるので確認しておきたいところです。
(酸化・硫酸・水酸化)マグネシウム
マグネシウムは腸内に水分を集めて便を柔らかくしてくれます。また膨らむことによってその刺激で排便も促します。
痛みは無いか少なく、習慣性もほとんど無いとされています。
腸に水分を集めるので服用する時は一口二口ではなくコップ1杯くらいの多めの水にしましょう。まれに脱水症状を引きおこすこともあります。
有名どころの商品ではピンクのパッケージの健栄製薬さんの「酸化マグネシウムE便秘薬」でしょうか。一時よくCM見かけませんでしたか?
酸化マグネシウムは長期間服用すると高マグネシウム血症になる恐れがあるため注意が必要です。
また腎機能に障害がある、腎機能が低下している、高齢者の人も高マグネシウム血症に気をつけましょう。
現在飲んでいる薬との飲み合わせでも相性が悪いものがある可能性があるので、心配であれば医師、薬剤師、登録販売者へ相談しましょう。(抗生物質、骨粗しょう症の薬、カルシウム製剤、鉄剤など)
個人的にはCMのおかげで馴染みがある商品です。すすめやすいですが、今飲んでいる薬や腎臓の状態はしっかり確認しておかなきゃと思った成分ですね。
- 吐き気
- 嘔吐
- 立ちくらみ、めまい
- 脈が遅くなる
- 皮膚が赤くなる
- だるさ、眠気
ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)
どこで切ればいいか分かりづらい成分名ですが、この成分も便に水分を含ませて柔らかくしてくれるものになります。
出そうで出ない、出口付近で固まっているような便秘にも効果的です。ジオクチルソジウムスルホサクシネートも痛みはあまり無く、習慣性もほとんどありません。
下剤としての効果は比較的弱いですが、副作用や習慣性の心配がほとんどないので慢性便秘の長期使用も可能です。
妊婦の人の便秘にも使用できますが、授乳中の人は服用しないか、服用した場合授乳を避けるかとなります。(お子さんに下痢の症状が現れる可能性があるため)
※妊婦、授乳中の人いずれの便秘の場合でも長期の使用は避け、できる限りまず医師への相談の上で服用をするようにしましょう。
具体的な商品だと大正製薬さんの「コーラックⅡ」と「コーラックファースト」、アリナミン製薬株式会社さんの「ハーブイン「タケダ」」に配合されていますね。
「コーラックファースト」はビサコジルも配合されていますが、1錠あたりの量が少ないので初めての人や痛みが気になるけど早めに出したい人におすすめです。
プランタゴ・オバタ種皮
これは正直聞き馴染みの無い成分でした、、、。(勉強はしたはずです、はい、、、)
ですが商品はゼリア新薬さんの「新ウィズワン」や、佐藤製薬さんの「サトラックスビオファイブ」に配合されています。(見たことありまくりでしたね。)
プランタゴ・オバタ種皮自体は医薬品成分ではありませんので、単独の商品は医薬品には指定されません。
食物繊維の塊のようなもので、腸内で水分を吸収して膨らみ、その刺激でぜん動運動を亢進します。
補助的な成分になるので、「新ウィズワン」もそうですがほかの成分と一緒に配合されていることが多いです。
水を吸収するのでこちらも多めの水で服用しましょう。注意点としてはものを飲み込むことが難しい人が服用すると、のどで膨らんで引っかかってしまう恐れがあります。
窒息死の例もあるのでおすすめする際は必ず確認しましょう。
「新ウィズワン」と「サトラックスビオファイブ」はチョコレート味などめずらしく味があるので、薬の癖のある風味が苦手な人は試してみてはどうでしょうか。
ダイオウ(漢方)
こちらはリズム感ある言い回しが特徴的なCMが印象に残ってる、アリナミン製薬株式会社さんの「タケダ漢方便秘薬」などに配合されている生薬です。
下剤として単独で配合されることもありますが、多くは大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)という漢方処方の一部で配合されています。(「タケダ漢方便秘薬」も大黄甘草湯です)
下剤として用いられたり、量によっては下痢止め、健胃作用、抗菌作用など様々な効果がある生薬成分です。子宮収縮を引き起こす可能性があるので、妊婦の人は使えません。
漢方だと飲み続けないと効果が出ない、効果が弱いんじゃないかというお客様もいらっしゃいましたが、風邪や便秘の漢方薬は比較的効きが早いほうなので試して見る価値はありだと思います。
(もちろん個人差はありますので合わない人は効果が出ない、わかりにくいかもしれません)
即効性があるわけではないので、寝る前に服用して朝に自然な形で排便するような使い方となります。
マルツエキス(乳児・幼児)
なんとなくですが、多くの登販資格者はこの成分は赤ちゃんでも使えるというのは頭には入っているのではないでしょうか?
マルツエキスは麦芽糖を多く含んだ甘いシロップです。麦芽糖が大腸に到達して発酵することで、腸の動きを促してくれます。
具体的な味は服用したことが無いのでわかりませんが、とにかく甘いとのことなので赤ちゃんでも抵抗なく服用できるでしょう。糖分やカリウムの栄養補給にもなります。
痛みや習慣性、副作用の心配はほとんど無いとのことですが、赤ちゃんの便秘がマルツエキスを服用させても改善しない、下痢になったなどあれば早めに医師に相談しましょう。
グリセリン(浣腸)
グリセリンは浣腸剤の主成分です。イチジク製薬株式会社さんの「イチジク浣腸」がネームとしては有名でしょうか。
使用方法はご存知の方が多いと思いますが、薬剤を直接肛門から入れます。腸に刺激を与えてかつ腸の壁を滑りやすくし、便を柔らかくしてくれます。出口で固くなった便におすすめです。
即効性がありますが、使ってすぐに排便しようとすると薬剤だけが出て効果がなくなってしまうので、便意が強くなるまでは待つ必要があります。人によりますが大体10分程度ですね。
使用できる年齢も0歳から使えますので赤ちゃんの便秘にも使えます。ただし1歳未満の赤ちゃんはできるだけ自然排便を試みるのが良いとされています。可能であればまず医師に相談しましょう。
注意点としてはあまり頻繁に使用すると慣れてしまって効果が感じられなくなってしまうことです。どうしてもでない、今すぐ出したい以外は使用を控えたほうがいいでしょう。
炭酸水素ナトリウム(座薬)
こちらはコーラックなどの座薬タイプに配合されている成分です。肛門内に挿入すると炭酸ガスが発生して腸を刺激してくれます。
浣腸と同じく効果の発現が早いのが特徴で、10分〜30分くらいで排便することができます。
一部の便秘では直腸の感受性が失われている場合があるので、便意を感じなくても時間が経ったら排泄を試みてみましょう。
浣腸と同じよう薬になりますが、どちらかというと坐剤のほうが作用は穏やかになります。
まとめ
- 有名所の「コーラック」にはビサコジルという成分が配合されているが、刺激性なので腹痛が起こったり、クセになったりするので用法用量は守ること
- ピコスルファートナトリウムは刺激性ではあるが、比較的刺激は少ない。
- センナも刺激性。使いすぎると慣れてしまって量が増えていってしまう可能性がある。
- 酸化マグネシウムは多めの水で服用すること。高マグネシウム血症に気をつける。
- ジオクチルソジウムスルホサクシネートは便に水分を含ませて柔らかくしてくれる。固くなった便におすすめ。
- プランタゴ・オバタ種皮は食物繊維の塊のようなもの。多めの水で服用する。
- ダイオウは単体でも使われることがあるが、多くは大黄甘草湯の一部で配合される。
- マルツエキスは赤ちゃんの便秘に用いる。甘く、栄養補給にも使える。
- 浣腸の主な成分はグリセリン。使いすぎると腸が刺激に慣れてしまうので連用はなるべくしない。
- 座薬タイプの便秘薬の主成分は炭酸水素ナトリウム。浣腸と同じく効果が早い。
妊婦の方、授乳中の方でも使える成分がいくつかありましたが、どの薬も基本的には独断で使用することは避けたほうが良いです。胎児、お子様にどんな影響があるかわからないので、基本的には専門の医師に相談した上で薬を処方してもらうのが安心です。
またどんな薬でもそうですが、現在処方されている薬があるなどで服用している薬がある、体調面で不安が少しでもあるようであれば医師、薬剤師、登録販売者に必ず相談してから使用を検討しましょう。
個人的にはあまり便秘になったことがないので、馴染みがある薬ではなかったのですが悩んでいるお客様は振り返ってみると多いなと思います。
便秘薬に限らずあいまいな薬の知識は再度確認しておきたいものです。ご覧いただきありがとうございました。
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